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福岡地方裁判所小倉支部 昭和46年(ヨ)283号

申請人

石部隆次

被申請人

西日本鉄道株式会社

主文

一、申請人が被申請人に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。

二、被申請人は申請人に対し、昭和四六年八月一日以降同年一〇月二二日まで一か月金一五五〇四円の割合による金員を、昭和四六年一〇月二三日以降本案判決確定に至るまで一か月金三八七六〇円の割合による金員を毎月二三日かぎり、それぞれ仮に支払え。

三、訴訟費用は被申請人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  申請人

主文同旨。

二  被申請人

申請人の申請を却下する。

申請費用は申請人の負担とする。

第二申請人の申請理由

一  当事者

被申請人は、電車及びバスによる旅客運送事業等を営むことを目的とする会社であり、申請人は、昭和三八年八月二六日、被申請人会社に雇傭され、被申請人会社戸畑自動車営業所に車掌として勤務していたものである。

二  出勤禁止及び解雇の意思表示

被申請人は申請人に対し、申請人が別紙内容の「確認書」(以下本件確認書という)に署名押印することを拒否しかつ後記数個の就業規則違反行為を行ったとして、昭和四六年七月三一日付で、就業規則八条七、八号により、同年八月一日以降の出勤禁止を命じ、ついで同年一〇月二二日付を以て、就業規則六〇条三号、一五号(五九条三号、一六号)により、申請人を諭旨解雇にする旨の意思表示をした(以下、出勤禁止及び解雇を本件処分という)。右就業規則の関係事項は別紙のとおりである。

三  本件処分の無効

しかしながら申請人には前記条項に該当する事由は存在せず、本件処分は違法無効である。

1  本件確認書押印拒否についての申請人の主張

(一)(1) 昭和四六年五月頃、被申請人会社(以下単に会社ともいう)は、乗務員等に対し、本件確認書に署名押印することを求めてきた。本件確認書が出されるに至った背景には、後記のような就業規則の一部変更をめぐって、会社・組合執行部対中央委員会・一般組合員の意見の対立があり、それらの動きからみれば、本件確認書は、会社の主張するように単に指導をうけその趣旨を理解し認識したことの確認を求めるだけのものではなく(ちなみに会社が確認書四項につき指導をうけたことの確認を求めるにとどめるとの見解を公式に打出したのは本件確認書問題が紛糾してきた昭和四六年八月一〇日の時点である)、就業規則の変更部分に関しその同意を求め、右規則変更の趣旨を更に補強することを意図したものである。

(2) ところが、右改正就業規則は成立の過程に不明朗な点があり、その内容は、私金の取扱に関し、私金所持禁止及び所持品検査の範囲を従来より拡大した上、私金証明の挙証責任を使用者側から労働者側に転換しようとするもので、労働条件を不利益に変更し、無効の疑いがある。

(3) 本件確認書は、個々の労働者に対し、就業規則変更により拡大された私金所持禁止の場所的範囲並びに就業規則六〇条一三号における私金証明の挙証責任が労働者側にあることについて、それぞれ同意を求めるものであるから、これに対し同意しないことは正当な権利行使であって、押印拒否は正当な理由に基くものであり、本件処分は理由がない。

(二) また、本件確認書の内容からすると、一項を承認することは新たな義務を負担することであり、四項を承認することは自己の潔白を証拠により証明する権利をあらかじめ放棄することである。従って、これへの押印を強要することは基本的人権を侵害するものであり、これを拒否したことを理由に本件処分をすることは処分権の濫用で許されない。

(三) 会社は、就業規則六〇条一三号該当事案の裁判において数件が一審敗訴の結果を生じたこともあって、昭和五一年九月一日、同条項を削除し、五九条の二として、勤務中私金証明のつかない金銭を携帯・所持したときは停職に処する旨の規定を新設した。その結果、本件処分の実質的根拠は消滅した。

2  その他の処分理由についての申請人の主張

(一) 会社は前記確認書押印拒否のほか、次の諸行為をあげ本件処分理由としている。

(イ) 昭和四六年七月八日、申請人は、戸畑自動車営業所事務室で賀元所長と斉藤主任が車掌岩崎利恵子に対し本件確認書について指導説得を行っているところへ入ってきて、同主任が退去するよう命じたが、これに従わなかった。

(ロ) 同月一九日、申請人は、出勤停止処分中にも拘らず、「乗務禁止を解け、白谷、大谷線ワンマン反対」と書いたゼッケンをつけ、同営業所乗務員控室においてビラを配付し、賀元所長からビラ配付の制止及び退去を命じられたが退去しなかった。

(ハ) 同月二二日、申請人は、出勤停止処分中にも拘らず同営業所事務室に来所し、小畑寛士、高島民雄、岩崎利恵子と共に、賀元所長に対し、右小畑、岩崎に対する出勤禁止(確認書押印拒否を理由とする)が不当であると抗議した。

(ニ) 同月二三日、申請人は、出勤停止処分中であるにも拘らず、同営業所乗務員控室においてビラを配付し、更に前記三名及び石田啓記と共に賀元所長に対し、前日同様の抗議を行った。

(ホ) 同月二八日、申請人は、就業時間中同営業所三階勤務宿泊所で下着だけになって寝ていた。それを見た長浜助役が制服を着用し乗務員控室で待機するよう指示したが、申請人は処分するならばすればよいと反抗し、指示に従わなかった。

(ヘ) 同月二九日、申請人は、同営業所乗務員控室においてビラを配付し、永留助役より注意をうけた。

(ト) 同年八月七日、本件出勤停止中の申請人は、前記乗務員控室においてビラを配付し、またデモ隊の先頭に立って確認書粉砕を叫びながら営業所構内に侵入し、賀元所長等の制止にも拘らず、ジグザグデモをくり返し、更に同構内出庫口付近で演説を行った。賀元所長らが演説の中止と構内よりの退去を再三にわたり要請したが申請人は従わず、演説終了後ようやく退去した。このためバス四、五台が四、五分遅れて出庫するのやむなきに至り、業務に支障をきたした。

(二) 右(イ)ないし(ヘ)の事実はいずれも認めるが、就業規則に該当する違法行為ではない。

(イ)の行為は同僚のことを心配して同席したにすぎず、正当な労働組合活動である。(ロ)ないし(ニ)、(ヘ)も労働組合員として有する正当な権利の行使である。なお(ヘ)は始業時間前の午前八時五〇分のことである。(ホ)につき、乗務員控室は、当時、仮眠所に使用されており、仮眠・休息する乗務員は夏季は上着を脱いで使用していた。長浜助役の申請人に対する指示は、確認書の件で抵抗する申請人に対するいやがらせ的行為である。

(ト)記載の事実については、申請人がデモ隊に参加した事実は認めるが、デモ隊が営業所構内に侵入した事実及びバス四、五台の出庫が遅れ業務に支障をきたした事実はなく、就業規則に該当する違法行為でもない。

四  申請人は、本件処分後、被申請人から就労を拒否されているところ、当時の申請人の基本賃金は一ケ月三八七六〇円であり、その支払日は毎月二三日であるが、本件出勤禁止により基本賃金額の六〇パーセントしか支給されなかったため、昭和四六年八月一日から同年一〇月二二日迄の分は各月二三二五六円の支給をうけただけであり、その後は全額支給をうけていない。

五  仮処分の必要性

申請人は被申請人から支給される賃金のみによって生活している労働者であって、本案判決の確定を俟っていては生活に窮し回復しがたい損害を蒙る。

第三被申請人の答弁及び主張

一  申請理由に対する答弁

1  申請理由一、二、四は認める。

2  同三のうち1(三)の事実(但本件処分の実質的根拠が消滅したとの主張は争う)及び2(一)の事実は認め、その余は争う。

3  同五は争う。

二  被申請人の主張―本件処分の有効性

1  本件処分に至る経緯

(一) 本件確認書押印拒否に関する事実

(1) 会社にとっては乗車賃がその収入の根幹をなすものであり、乗務員による乗車賃の不正領得(いわゆるチャージ)は企業の存立を危くするものである。それ故会社は従来より乗務員による乗車賃の不正領得防止に努めてきた。しかしそれにも拘らず、過去において乗務員による乗車賃の不正領得行為は絶えることなく、就業規則により懲戒処分に付される者は相当数にのぼった。特に昭和四五年二月には八幡自動車営業所において集団チャージ事件が発覚し、会社の社会的信用も著しく失墜したので、会社及び西日本鉄道労働組合(以下組合という)は、不正行為の防止並びに社会的信用回復のため労使合同適正化委員会を設け、そこにおいて乗車賃の不正領得を防止するための種々の方策を講ずることにした。そこでその一つとして、私金取扱についての教育指導を再度行い私金取扱の手順を遵守することの確約を求めること、就業規則六〇条一三号の「私金の証明」が今後厳格に解される旨の周知徹底を行うことが決められた。

(2) 会社は、その具体的方法として、各営業所等での告示文の掲示、文書による家族への協力要請、業務研究会による教育指導等のほか、更に営業所長等が所属従業員に対し個人指導を行った後、本件確認書に押印を求めることとした。

右確認書一項乃至三項は、所持品の範囲を一層明確にすることを含めた私金の取扱について、教育指導をうけたとおり実行することを確約し、四項は「私金の証明」について同項記載のとおり教育指導をうけた旨確認することを求めたものである。

(3) 会社は、昭和四六年五月上旬から乗務員らに対し前記教育指導を順次開始し、同年七月三一日にはほぼ全員(約一〇二〇〇人)が確認書に押印もしくは文書による同趣旨の表明をした。

申請人は、同四五年一二月二〇日から同四六年七月一四日まで病気欠勤及び傷病休職し、同月一五日から二四日までは出勤停止処分(私金不携帯誓約書への押印拒否による)中であったので、会社は申請人に対しては同月二五日から教育指導を行った。そして三一日までの間に、賀元所長、斉藤主任及び北九州営業局の中自動車運輸課保安係長らが個別指導し、本件確認書に押印するかもしくは確認書と同趣旨の文書を提出するよう指示したが、申請人はいずれもこれを拒否した。そこで会社は同月三一日、申請人に対し、就業規則八条七、八号により、翌八月一日以降の出勤禁止を命じた。

更に同年八月一九、二〇日には、北九州営業局総務課の吉瀬労務係長が本件出勤禁止中の申請人に対し指導説得を行ったが、申請人はこれに対しても確認書の押印或は同趣旨文書の提出を拒否し、確認書一項乃至三項を遵守することの確約をなさなかったものである。

(4) 申請人が押印を拒否し続けた理由を要約すると、(イ)確認書の成立形式に関する問題と(ロ)所持品検査の及ぶ範囲、自己点検の強化等の問題になる。

(イ)については、多数の乗務員等を有する会社としては周知徹底を期するため、前もって書類を作成し、教育指導のうえ押印を求めることは何ら不当でない。

(ロ)については、確認書一項によると所持品検査の及ぶ範囲が従来より拡大強化されるというが、担当箱・自家用車等は従来から検査の対象となっていたものであり、「準ずる場所」は支部労使協議会で協議決定されることとなっている。三項も新たに乗務員の負担を重くしたものではなく、四項については、申請人は押印すればこれにも同意したこととなり、万一処罰される事態が生じても異議が申立てられなくなる等主張して押印を拒否したが、これは就業規則六〇条一三号の私金証明が従来より厳格に取扱われることとなった旨指導をうけたことの確認を求めたにすぎず、その旨を十分説明し、疑義があれば理由書を書くよう説得したが、応じなかった。かゝる申請人の所為は、就業規則六〇条三号又は一五号(五九条三号)に該当するものである。

(二) その他就業規則六〇条三号、一五号に該当する事実

申請人には右のほか、申請理由三2(一)記載(イ)ないし(ト)の事実があり、右各行為に就業規則を適用すると次のとおりである。

(イ) 六〇条一五号(五九条三号)

(ロ) 六〇条一五号(五九条三号、一六号)

(ハ) 六〇条一五号(五九条三号)

(ニ) 六〇条一五号(五九条三号、一六号)

(ホ) 六〇条一五号(五九条三号)

(ヘ) 六〇条一五号(五九条一六号)

(ト) 六〇条三号

なお、申請人は昭和四四年一〇月四日から同年一一月一日まで私金不携帯誓約書に押印を拒否したことにより、同四六年七月一五日から同月二四日までの間、出勤停止一〇日の処分を受けている。

2  本件解雇の意思表示

前項(一)(二)の事実に情状も考え合わせ、会社は、経営秩序維持の必要上、申請人を諭旨解雇に付するもやむを得ないと判断し、同年八月二〇日労働協約所定の手続に従い、組合に、申請人を就業規則六〇条三号、一五号(五九条三号、一六号)により諭旨解雇に処する旨の提案を行い、組合より同年一〇月二二日付で会社提案を承認する旨の回答を得たので、同日付で申請人を諭旨解雇に処したのである。

第四被申請人の主張に対する申請人の答弁

被申請人の主張2のとおりの手続が経由された事実は認める。

第五証拠(略)

理由

一  申請理由一、二については当事者間に争いがない。

二  そこで、本件処分の有効性を判断するにあたり、まず同処分に至る経過をみるに、(証拠略)を総合すると、次の事実が認められる。

1  被申請人会社(以下単に会社ともいう)においては、電車、バス等による乗車賃が収入の根幹をなすものであり、就業規則にも乗務員による不正領得行為(いわゆるチャージ)の防止のための諸規定を設け所持品検査を行う等、かねてよりチャージの防止ないし摘発に努めてきた。それにも拘らず不正領得行為のため懲戒処分に付される者はあとを絶たず、昭和四五年二月には八幡自動車営業所において乗務員による集団チャージ行為が発生したため、世間から批判され、会社の社会的信用も著しく失墜した。右事件を契機に、会社及び西日本鉄道労働組合(以下組合という)は、不正領得行為を防止して社会的信用の回復に努めるべく、労使協議会で論議の結果、労使合同の不正防止対策懇談会、ついで適正化委員会を設け、そこにおいて乗車賃の不正領得防止の方策を講ずることとなった。昭和四五年一〇月二八日に本社本部間の第一回適正化委員会が開かれ、爾後そこで審議された事項は組合の中央委員会に報告、承認をうけるという形で連絡をとりながら、防止策が検討されていった。

2  しかるに、その後においても所持品検査で金銭を携帯している者が発見されるので、会社は、就業規則を一部改正して金銭取扱につき一層厳しく対処すべく、私金携帯所持禁止等に関する右規則改正を組合に提案する一方、昭和四六年四月二六日及び二八日の労使合同適正化委員会において、従前私金携帯禁止の徹底がお互いに足りなかったことを確認し、会社が組合に申入れていた前記金銭携帯者に対する解雇提案を取下げ、改めて監督者に対する指導と、私金携帯禁止者に対し告示文の掲載、業務研究会での指導、家族に対する協力要請のほか、本件確認書を用意しこれに各人の押印を求めるという方法で周知徹底をはかることとした。

同年四月三〇日に本社で開かれた全自動車営業所長会議において、右決定の趣旨が説明され、五月一一日の北九州営業局における営業所長会議で指示された内容につき具体的方法を検討し、確認書押印に関しては、各営業所において内容の説明と周知徹底を行うこととなった。

申請人の所属する戸畑自動車営業所では、五月二二日から一週間にわたり、業務研究会や個人指導を通して、所長が各乗務員に本件確認書への押印を求めた。

3  申請人は、昭和四五年一二月二〇日から腰痛のため翌年三月中旬まで入院し、三月二〇日から七月一四日まで傷病休職、七月一五日から二四日まで出勤停止処分(後記私金不携帯誓約書押印拒否により出勤停止一〇日間の処分をうけ、本人病気のため実施されずにいたもの)をうけたため、正式に出勤したのは七月二五日であった。もっとも退院後復職までの間は体をならす必要もあって、営業所へ食事や入浴に出てきており、その折に本件確認書押印のことなど耳にしていた。

そして七月二七日に賀元所長に呼ばれ、斉藤管理主任立会のもとに確認書につき説明をうけ、押印することを求められた。しかし申請人は確認書に対する自己の考えを述べて押印することを拒んだ。翌二八、二九日も引続き申請人に対する賀元所長らの説得が続けられたが、申請人は押印に応じなかったので、賀元はその旨北九州営業局へ報告し、押印の見通しのないことを伝えた。賀元から報告をうけた北九州営業局では七月三〇、三一の両日にわたり自動車運輸課の中保安係長が営業局に申請人を呼んで確認書押印につき説得・指導を行ったが、申請人は確認書の成立・形式に疑問がある、所持品検査につき拡大強化された部分がある等自説を述べ、依然として押印を拒否し、押印に代え書面を提出することも拒否した。その結果、七月三一日に、申請人に対し、就業規則八条七、八号による翌八月一日以降の出勤禁止命令が本社より出された。

これに対し申請人は、中係長に宛て申請人の態度を表わした文書を内容証明郵便で送付したので、北九州営業局総務課の吉瀬係長は、右内容証明付文書の内容につき本人に確かめるべく、また本件出勤禁止命令により飜意したことを期待して、八月一九、二〇の二日間、再び申請人と話合いの機会をもったけれども、最終的な申請人の答は、確認書に押印はしない、その理由書も提出しないということで、ついに押印に応じなかった。右押印に最後まで応じなかったのは乗務員のうち申請人ただ一人であった。そして、会社は一〇月二二日付で、就業規則六〇条三号、一五号(五九条三号、一六号)により、申請人を諭旨解雇に処した。

三  そこで、本件処分理由の一つとされた本件確認書押印拒否の事実が就業規則八条七、八号、六〇条三号、一五号(五九条三号)に該当するかどうかを検討する。

1  申請人が、賀元所長ほかの上司から説明をうけ本件確認書に押印せよと言われたにも拘らず、自己の考えを主張して最後まで従わなかったことは、上長の職務上の指示に従わなかったと一応言うことができる。

2  次に申請人が右押印を拒否した具体的理由についてみるに、(証拠略)を総合すると、本件確認書に対する申請人の考え、それに対する会社側の説明ないし回答及び申請人の最終的態度は、左のとおりであったことが認められる。

(一)  申請人の考え

(1) 会社は昭和四六年五月下旬頃から私金取扱に関し本件確認書を作成し、各営業所ごとに組合員に対し押印を求めてきたが、右確認書は、従前私金携帯禁止に関する就業規則の周知徹底が不十分であったとして就業規則を一部変更し、私金証明が厳格に解されることの周知徹底を行うことを条件として組合執行部と取引し、今後発生する私金携帯事件に対しては一切弁解を認めないという強い態度を表明したものとして、組合員に対し出されてきたものである。

(2) しかし、まず確認書の性格をみると、「確認書」とは通常労使間で合意に達した内容を文書に作成したものを称するのに、本件では会社側が予め一方的に内容を用意し、同意を迫ったり業務命令をもって個々人との間で文書を取りかわすということがなされており、本来の確認書とは異っている。

第二に、就業規則の一部変更により、従来より所持品検査の範囲が拡大強化されているが、これを確認書という文言を使うことにより双方が了解したという意味をもたせようとしている。具体的には、一、三、四項で「所持」と「携帯」の使いわけがされているが、これにより対象が拡大され、また「準ずる場所」により場所的範囲が拡大され、個人の人権が侵害されようとしている(ちなみに会社では従来所持品検査ということで人権を無視した屈辱的な身体検査が行われている。所持品検査の必要性は認めるけれども所持品検査の名をかりた行き過ぎた身体検査は許さるべきではない。)。更に四項では私金の証明が不可能に近いほど厳格に解され、六〇条一三号により容易に解雇処分となるおそれが大いにある。

(3) 確認書はこのような拡大された内容を個人との間で確認し四項でその効果を決定的にしようとするねらいをもつものであり、現実に六〇条一三号によって処分される者が出てきている。従来の労働条件を不利益に変更する重大な内容を含み、個々の労働者の首切りにつながるような命令書である本件確認書に押印することは、内容に同意を与えたと解されるから、応ずることは絶対できない。

(二)  これに対する会社側の説明ないし回答

(1) 確認書は組合と協議の上、周知徹底の一つの方法として押印してもらうことにきめたもので、前もって用意したのは多数の人に周知徹底させるため必要な措置である。

(2) 一項ないし三項は、このとおり実行することを誓約し、四項はこのような指導をうけたことを確認してもらえばよく、押印は、右誓約と確認を明らかにするため求めるものであって、これにより何ら不利益をうけるものではない。

(3) 従前の就業規則より拡大強化された部分はない。担当箱・構内の自家用車は従来も検査の対象であり、構内の準ずる場所については、今後労使協議の上決定するので問題はない。

(4) 押印しない場合は、理由書を提出せよ。

(三)  申請人の最終態度

(1) 確認書が会社・組合の統一見解であることは認めるが、確認書自体に納得できない点がある。これはむしろ誓約書である。

(2) 出勤したら私金不携帯誓約書に押印し、私金は従来どおり預ける。

(3) 一項及び三項は、従来のやり方を拡大強化していると考える。担当箱・自家用車の捜査については会社は問題ないというが、自分としては問題があると思うので押印はできないが、問題点以外は従来行っているとおりにする。

(4) 四項は私金証明につき納得できない点がある。指導をうけ話を聞いたことは認めるが押印はできない。

(5) チャージ防止の必要性はわかるが、押印すれば会社の思うとおりになり、かような方法は不当と考えるので押印できない。理由書も出さない。

3  進んで、右のような申請人の拒否理由が正当なものか否か検討してみる。

(一)  まず、本件確認書が前記のような形で出されてくるまでの組合内部における審議の経過をみてみるに、前記集団チャージ事件のあと、いかにしてかかる不祥事をなくすかにつき論議の結果、労使合同の適正化委員会が設けられた件は前認定のとおりであり、更に(証拠略)を総合すると、次の事実を認めることができる。

(1) 昭和四五年一〇月に、組合では新中央委員が選出され、その第一回中央委員会が同月二七日に開かれたが、そこにおいて執行部提案に基き、適正化委員会(以下適正委という)を設けることを確認した。そして適正委は労使で設備等の改善につき協議し、そこで確認された事項は中央委員会の承認を求めるものとされた。

(2) 同年一二月四日開催の第二回中央委員会では、適正委の確認事項の報告につき議論が沸騰した。就中所持品検査について安全地帯を作らぬことに関し、「会社施設内の担当箱・自家用車等及び施設に準ずる場所をもその範囲とする」旨の報告があり、これについては、従来この時点まで所持品検査は、身につけているものを中心に行ういわゆる身体検査が主であったので、これでは従来より所持品検査の範囲が拡大されることになると、これをめぐって激論となった。そして遂には、労務管理まで話合っているような適正委は廃止すべしという動議まで出されたほどであった。更にそのあと、同年一二月一日付で会社から提案された就業規則変更の件についても審議されたが、これは特に六〇条一三号(六条、七条)に関し、従来の私金の「携帯」を「所持携帯」と変更するもので、これにつき携帯概念をめぐって会社と組合の考えの相違が明らかになった。すなわち、会社の説明では「これは従来の内容を変更するものでなく、表現を明確にしただけである。私金証明に関連して担当箱・自家用車等もその対象となる。」ということであったのに対し、組合は「携帯」を、単に身につけるか持つことに限定して解釈しており、従って「この改正では単に表現だけでなく内容が大きく変る。これではさきに議論した適正委の件と同じであり、問題がある。」として就業規則改正には反対の意見を表明した。

(3) 昭和四六年三月三、四日の第五回中央委員会では再びさきの就業規則一部変更の件が審議されたが、ここでも第二回同様、所持・携帯及び私金証明のつかない金銭の件が論議され、ここで決定された「組合意見書」では、所持とは会社の管理施設権の及ぶ範囲内の担当箱、自家用車であり検査の場合は本人立会とする、「携帯品、所持品検査」は従来の所持品検査の意味である等の意見を付している。

ただし、同年三月四日付の「就業規則一部変更に関する意見書(執行委員長より労務部長に宛てたもの)」では、当日五中委で決定した組合意見書の内容とやや異なり、所持概念に「支部労使協議決定したこれに準ずる場所」という文言が挿入されており、三月二一日付組合新聞にも右意見書が掲載されている。そして同年四月二日の第七回中央委員会で、二月二二日開催の内部適正委で右意見書が審議され支部関係の諮問を求めたことが報告されている。

(4) 右のような経過の後、前述のとおり、同年四月二六日金銭携帯者に対する解雇提案の取下げ、同二八日適正委で周知徹底の方法の話合い、同三〇日の営業所長会議と続き、本件確認書押印が求められるに至るのである。

(二)(1)  前記のように改正就業規則の条項は中央委員会でも大いに紛糾し論議のあったところであり、本件確認書は右就業規則の周知徹底の一方法としてとられたものであって就業規則の改正部分と関連あるものである。そこで改めて本件確認書に即して問題点を検討してみる。

イ (証拠略)によると、就業規則六〇条一四号には所持品検査を拒否した場合は懲戒処分される規定があり、自家用車等が所持品検査の対象になった場合、立入検査を拒否すれば右規定により解雇されるおそれもあること、従来の所持品検査は(特に戸畑では)身体検査が主で、他から通報があった場合等特別な場合を除き、担当箱や自家用車等(含スクーター、自転車)が検査の際必ずしもその対象として同時に検査されていたわけではなく、担当箱が検査される場合は本人立会であったこと等が認められる。そうであれば、確認書一、三項の自家用車等が対象になることや、これに準ずる場所がどこになるかは、会社の強い姿勢とも考え合わせ、組合員にとっては重大な関心事とならざるを得ない。

ロ 更に四項の私金証明の方法についても、家族の証言は私金証明とならないとすれば、いかなるものならよいのかが問題になってくるのみならず、同項と関連する就業規則六〇条一三号については、(証拠略)により認められるとおり、これによる解雇事件が裁判となり、一三号の規定自体その解釈をめぐって裁判所の判断を俟たねばならなかったほどの問題ある条項であるから、四項の趣旨につき申請人らが疑念をもつのは無理からぬことである。

(2)  右のような問題点に対し、会社の説明は前述のとおり「従来のものを確認するだけで範囲を拡大したものではない。不利益をうけるものではなく、ただ説明を聞いたことの確認である。」というのみで、右のような不安、疑念を抱く組合員に対する説明として十分とは言い難く、現に、(証拠略)によれば、申請人のみならず一般組合員の中にも、当初本件確認書に同様の不安、疑問をもち、押印に応じなかったものが数十人いた(ただし彼らは、最後には懲戒処分をおそれて不承不承押印に応じた)ことが認められる。

(三)  そこで、会社が本件確認書に押印を求める目的と関連して、申請人に対しこれを強制できるかどうかについて検討する。

本件確認書押印の目的については、会社労務係長吉瀬英章が、(証拠略)及び証言において、就業規則の周知徹底が目的であり、労使で決定した方法であるから、それに従ってもらうことだけであって、押印により何ら不利益をうけるものではなく、ただ確認書記載事項につき説明を聞いたということの確認の意味をもつに過ぎない旨述べている。

しかし、もし右の周知徹底が目的であるならば、申請人は、休んでいた関係で業務研究会には出席しなかったものの、賀元、中、吉瀬らから計五回にわたり説得をうけ、他の人よりむしろ指導をうけているともいえるのであるから、その目的は一応果されており、また、右説明指導を受けた事実の確認は、本件確認書への押印でなくとも、他の方法(例えば説明者の報告書など)で証することにより、後日申請人に知らなかったといわせぬことは可能であろう。

むしろ、(人証略)によると、吉瀬らは前記説明の際押印の効果として「押したら知らんやったとは言えない。」と告げていることが認められ、かかる事実に、押印拒否に対し解雇処分をもって臨もうとする会社の強硬な態度を考え合わせると、会社が本件確認書に押印を求める真意は、単に記載内容について説明をうけ理解したことの確認にとどまらず、進んで、その内容につき押印者の同意と誓約を求めることにあると解される余地が十分にあり、もしそうであれば、押印した以上これを根拠に処分されることも可能なことになろうが、私金携帯禁止等就業規則違反で処分されることは別論として、自己の誓約違反を理由に処分をうけるおそれのある事項につき同意を強要し、或は自発的同意がないのに誓約を強制することは、たとえその旨の労使間の決定があったとしても、詐されないこと当然であり、業務命令としてもなし得ない。

4  以上検討したような、本件確認書が出されてくるまでの組合内部における審議の経過、確認書自体のもつ問題点、会社の押印を求める意図、申請人の押印拒否理由その他の事情を考え合わせると、申請人が本件確認書への押印に応じなかったことは、それなりに首肯し得る理由があると認められ、これをもって上長に対する理由なき反抗と断ずることはできないので、就業規則八条七、八号、六〇条三号、一五号(五九条三号)のいずれの条項にも該当しないといわねばならない。

四  次にその他の本件処分理由につき判断する。

1  前記のほか申請理由三2(一)記載の(イ)ないし(ト)の事実を理由に被申請人が本件処分をしたこと、(イ)ないし(ヘ)の事実があったことは、当事者間に争いがない。

2  そこで、右事実が就業規則上本件処分理由に該当するかどうかを検討する。

(一)  (イ)の事実については、岩崎車掌の説得の場へ入ってきて立去らなかったことは好ましいことではないが、(証拠略)によると、申請人はその間黙って傍らにいただけで、何ら妨害行為などしたわけではないことが認められる。

(ロ)(ハ)(ニ)(ヘ)の事実については、(証拠略)によると、そのうち、抗議行為については、本件確認書に関し申請人同様納得できずとして署名押印を拒んでいる同僚が、そのため出勤禁止処分をうけたことに対してなされた抗議行為であって、右は組合活動の一環と認められ、ビラ配りについては、組合がビラを配付することは労働組合活動の一として通常行われており、乗務員控室でのビラ配りも慣行として黙認された形で行われていたことが認められ、本件のみが特に強い違法性を有するものとは考えられない。

従って、右(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ヘ)の事実は、いずれも本件処分理由とするほど重大な事実とは認められない。

(二)  次に、(ホ)については、(証拠略)によると、申請人は七月二七日は予備勤務を命ぜられ、本件確認書の説明をうけ押印を拒否したところ、翌二八日も同じく予備勤務を命ぜられた。しかし確認書についての指導説得がなされたのは午後三時頃からであって、それまでは乗務員控室に座っているよう言われたまま特に仕事も与えられず、何らなすことない状態におかれていた。たまたま暑い時でもあったので、午前一一時頃、乗務員が休憩時に仮眠をとる宿泊所の三階へ上り、仮眠の時と同じように半袖丸首シャツとステテコ姿になって寝ていた。そこへ長浜助役が上ってきて、「乗務員控室で待機しとかんか」と言ったので「仕事をさせんのに、営業所構内であればどこにおってもいいじゃないか。」と言葉を返し反抗的な態度をとったことがある。以上の事実が認められる。

思うに、勤務時間中、乗務していないのに仮眠することは通常許さるべきことではないが、当時申請人のおかれていた右認定のような事情のもとでは、これも本件処分に値するほどの義務違反とは認められない。

(三)  更に、(ト)については、(証拠略)によると、その頃になると、本件確認書に押印した後、現実に就業規則六〇条一三号により解雇される人が出てきたので、申請人は、労組が認めた内容にしろ、労働者にとり不利益な内容をもつものについては反対すべきだと考え、同僚や地域の人達四、五〇名と共に戸畑駅前で確認書処分反対の集会をもち、午後一時五〇分頃、戸畑自動車営業所に向けデモ届に基く抗議のデモを行った。営業所前には機動隊が待機しており、バス出口には営業局の労務関係職員二、三〇人がピケットをはっていたので、デモ隊は出庫口前でジグザグデモを行ったが、そのうちピケ隊の制止にも拘らず構内に一〇メートル程入りこみ、二、三回ジグザグデモを行ったあと、三、四分後に構外へ出て、道路上で抗議演説を始めた。申請人も二番めに演説した。その間所長、助役らの制止もしくは中止要請が何度もなされ、またこの騒ぎのため、四、五台のバスが出庫時刻より何分かおくれて出庫した。以上の事実が認められる。

右認定のとおり、デモによりバスの出庫が予定時刻より遅れた事実はあるけれども、本件デモは届出に基きなされたもので、会社において前以って予想でき対策も考えられたこと(警察の警備もなされていたものである)、デモはその性質上これを阻止しようとする側と多少のトラブルは避けられないものであること、本件では構内に侵入しジグザグデモは行ったものの三、四分後には構内から退去しており、バスの出庫に与えた影響も若干の遅れにとどまったこと、デモの場における所長・助役らの制止等は、申請人に対する職務上の指示とは必ずしもいえないこと等々考えると、申請人の右行為も本件処分の理由とするほど重大な違法行為とは認められない。

3  右のとおり、前記(イ)ないし(ト)の行為は、いずれも個々的には就業規則上本件処分理由とするに足りないが、これら一連の行為を全体として考察しても、これらはすべて本件確認書に関する争いに起因するものであるから、さきに押印拒否の点につき述べた事情を考えれば、いまだ本件処分理由とするには十分でない。

なお右の行為のほか、申請人には、前述のとおり、昭和四四年一〇月四日から同年一一月一日まで私金不携帯誓約書に押印を拒否したことにより、就業規則五九条三号により出勤停止一〇日の処分(実施は昭和四六年七月一五日から七月二四日まで)をうけた事実があるが、これは、申請人本人尋問の結果によると、私金不携帯誓約書に押印することが解雇に結びつくと理解したことによるものであること、その後は押印しており、今後も押印することを約していることが認められるから、この事実があることによって、さきの(イ)ないし(ト)の行為が本件処分に値するほど情状の重いものになるとはいえない。

五  以上検討したところによると、申請人の前記諸行為のうちには、会社の乗務員として望ましからざるものが含まれていることは否定できないけれども、これらにより会社のうける不利益、本件処分により申請人のうける不利益等双方の利害を勘案すると、右諸行為は、これを全体的に考察しても、いまだ就業規則八条七、八号、六〇条三号、一五号(五九条三号、一六号)に該当するとして、本件処分をするに値するほど情状の重いものとは認められないから、被申請人から申請人に対する本件処分の意思表示は、結局、該当事由がないのになされた無効なものといわざるを得ない。

そうすると、被申請人と申請人との間にはなお雇用関係が存続し、申請人は被申請人に対しその雇用契約上の権利を有するというべきところ、申請理由四は当事者間に争いがないから、申請人は被申請人に対し、昭和四六年八月一日から同年一〇月二二日までは一か月一五五〇四円、同年一〇月二三日以降は一か月三八七六〇円の賃金請求権を有することになる。

六  仮処分の必要性

申請人本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すると、申請人は被申請人よりの右賃金を唯一の収入源としてその生活を営んでいた労働者であり、本件処分以後右収入の途を絶たれ、借金及びアルバイトをしながら生活の資を得ていることが認められるから、他に特段の事情の認められない本件では、右賃金の支払を受けられないときは、申請人はその生活に困窮し著しい損害を蒙るおそれがあるというべきである。

七  以上のとおりであって、申請人の本件仮処分の申請は被保全権利及び保全の必要性について疎明があったものというべきであるから、申請人に保証を立てさせないでこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 谷水央 裁判官 新崎長政 裁判官 島田充子)

確認書

本日、所長より個人面接で、下記事項について指導を受け理解しましたので、今後私金(有価証券を含む以下同じ)の取扱いについては、十分に注意を致します。

1 勤務中私金を携帯もしくは所持しないこと

身につけないことは勿論、会社の管理施設権の及ぶ範囲内ならびにこれに準ずる場所の本人の占有する担当箱、自家用車等に所持してはならない。

2 私金をもって出勤した場合は、ただちに所定の手続によって預けること

3 出勤時には、携帯品及び所持品(担当箱、自家用車内等)に私金がないか再度確認すること

4 万一勤務中に私金を携帯もしくは所持していた場合、これが私金であることの証明は、極めて厳格に解されることになり、家族等の単なる証言は私金の証明とはならないこと

就業規則関係条項

第八条 社員が、次の各号の一つに該当するときは、出勤または就業を禁止することがある。

七 懲戒処分に該当する事由のあったとき

八 前各号のほかやむをえない必要があるとき

(懲戒事由)

第五九条 社員が次の各号の一つに該当するときは、情状により譴責、減給または出勤停止に処する。

三 正当な理由なく上長の職務上の指示、会社の諸規程、通達などに従わなかったとき

一六 許可なく業務以外の目的で文書を掲示もしくは配布したとき

(懲戒事由)

第六〇条 社員が次の各号の一つに該当するときは、諭旨解雇または懲戒解雇に処する、ただし、情状により出勤停止にとどめることがある。

三 上長の職務上の指示に反抗しもしくは会社の諸規程、通達などに故意に違反しまたは越権専断の行為をしたとき

一五 前条各号の一つに該当しその情状が重いとき

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